Reserch&Survey Reserch & Survey 臨床的デザインとしてのリサーチ Field-based Design D4Hのリサーチは常に臨床的で、現場・フィールドに根ざす。遺産の状態を把握するための診断・観察、介入を伴う調査・ 試験、あるいはその後の修復という行為は、人体に対する診察・治療と重なる。医療の現場でも、診断のための検査は極力患者の負担にならない方法が採られ、術後の影響を最小化するような術式が開発されてきたように、遺産保護のプロセスにおいても、まもるべきものへの介入は小さくとどめるに越したことはない。複雑に絡み合った生命に対する不可逆的な操作(=現状変更)の回避と、最小限の介入 (minimum intervention)は、特に重要な視点だ。なぜ歪んでいるのか、後世にどのような手が加えられたのか、遺産そのものやそれらを取り巻く環境の今・そしてこれまでの履歴を明らかにするため、最小限の介入によって臨床的なリサーチを積み重ねる。私たちにとっては「診る」ことこそが、デザインの出発点である。 世界を記述する D4Hのリサーチは、大きく1.形をつかむ2.流れをとらえる3.力を測る4.時闇を写すの4つに分類される。いずれも遺産そのものあるいは、それを取り巻く環境や世界を、記述/共有/伝達可能な可視化された媒体に転記する行為に他ならない。 長い時間を経たものにとって、築造当初の 「計画」や「設計図」は必ずしも現実を正確に記述したものではない。建設時の施工誤差や、経年変形など、ゆがみ・ひずみ・はらみを正確に捉えることは、 診断の重要な一歩となる。 三次元レーザー測量で得た点群データの透過度を調整することで、レントゲン写真のように元来不可視な、前後・上下の重なりや相互関係を考察することができる。またドローン写真測量により得られた画像より、周辺の環境を広域で捕捉したり、屋根面等など地上から補足しにくい場所の情報を取得・分析することが可能だ。 水システム解析 水位計測を中心に、各種水文調査・流量解析により、流域全体の水システムを明らかにし、古の治水遺産に現代的な意味を見出す。水位計による多点計測により、干満の動きや、降雨時の増水状況等を長期にわたり、インターバル計測・記録することで、広域の水の収支について、解析だけでなく実現象で捉えることができ、流域の水システムの全体像をおおよそ把握することが可能。 解析: 切り捨てられる価値をすくいあげる 私たちの暮らしを支えてきた伝統の技法や素材、知恵の中には、科学的合理性では測りきれない繊細な秩序や経験値が数多く存在するが、近代以降のわずか200年に足らずの時間の中では、その全容は解明されていない。複雑な相互作用性のある現象、あるいは職人の感性なくして再現性が乏しいものなどは、近代科学の定量化の枠からこぼれ落ちてきた。たとえそれが何世紀にもわたる伝統に裏打ちされた技術や知恵であっても、こうした”わかりづらい”価値は、計算にのらないという理由で、ことごとく排除されてきたのだ。石積などがその典型であるが、手仕事に由来する様々な伝統工法、あるいは風・水といった現象の境界がどこまでも広がりをもつようなものは、その複雑さ故、その摂理を簡単に捉えることが難しい。しかしながら、高度に都市化された一部の地域を除き、今なお多くの地域においては、それら捉えどころが難しいものたちが景観や生活の一部として息づいている。そして、それらが暮らしにかけがえのないものとなっているならば、切り捨てることはできない。現代ではセンサー技術や解析などのツールの発展によって、これまで経験に依存していた領域を再び観察・補足できるようになってきた。D4Hはこれまで切り捨てられてきた価値について、積極的に最先端の技術の助けを借りながら、できる限り補足することを目指している。 風況解析 歴史的建造物に作用する卓越風の作用が、周辺の地形だけでなく、土地利用の変遷に大きく影響をうけていることを検証し、保存整備における風圧力を設定した。 石積構造解析 廃墟となった組積造建造物に対する介入を最小限とするため、安定性を損ねた部位の特定、補強等の介入の効果について検証するため、有限要素法(FEM)により石積をモデル化。 つくる楽しみの回復 近代社会における「建設」は、企画/構想→計画→設計→建設という一方通行の流れの中で行われ、多くの場合その段階ごとに分業され、異なる主体がそれぞれのプロセスを担っている。そして建設されるもののあり方は上流で決定され、下流はその決定に従い、管理された中で仕事を全うするのが当たり前になった。現場をよく知る計画者・設計者が上流でその価値を組み込まない限りは、建設現場での創意工夫や技術・材籾の特質が設計を描きかえる動機になることや、企画を覆すことも難しい。ものは人々の手で現場や工場でつくられるという事実は変わらない。受発注構造や経済の論理、抽象的価値の前では現場の声は極めて非力だ。その流れに逆らえば上流の意思決定者から排除されることさえある。そんな分業・一方通行化された非対称な構造の中で失われつつある最たるものが「つくることの楽しみ」ではないか。近代社会における一方適行化、あるいは保存と創造の断絶が、その楽しみを奪ってきたと考える。D4Hの取り組みはこの問題意識に根ざす。手と頭の応答、すなわち現場(具体)と机上(抽象)、あるいは「まもる」と「つくる」の往還の中にこそ創造の喜びはある。私たちが時に建設と計画をひっくり返し、下流側から遡上するプロセスをとること、分業化されたプロセスを再統合し、建設行為の全体性を取り戻そうとすること、意図して相互浸潤的に建設を進めるのは、その課題へのささやかな抵抗である。 Survey & Reserch 保有機材一覧 測量機器 : 形をとらえる 三次元レーザー測量機Leica RTC360 トータルステーションTS16 I 3" R1000, imaging total station 写真測量用ドローンDJI-Phantom 4 RTK GNSSステーションDJI-D-RTK2 高精度GNSS受信機内蔵対空標識エアロボマーカー(AS-GM01)×4 オートレベルNikon AE-7 三脚Leica 高精度木製三脚/カーボン製三脚×3 Myzox 軽量木製三脚×4 プリズム・整準台Leica ー素子プリズムGPR12l/整準台×3 整準台Myzox 着脱式整準台MY030×4 レーザー墨出し機Bosch GLL8-40E 水文観測 : 流れをとらえる 応用地質 気圧/温度計S&DL mini バロメータ 応用地質 絶対圧水位計S&DL mini 4900×9 ロ ープ式水位計サトウテックHJ-WLR 30m 地盤調査:力をつかまえる 地盤調査貫入試験機簡易動的コーン貫入試験機 撮影:時間をとらえる 動画/静止画撮影カメラFUJIFILM XT-3 レンズ各種 Go Pro HERO 10 Lumix DC-FT7-K 360°カメラInsta 360 X2 カメラジンバルDJI RS 3 Mini